数字がある原稿は説得力を持ちます。一方で、対象や集計方法が抜けると、正しい数値でも違う意味に読まれます。出典を書く仕事は、URLを付けることと、その数字をどう読むかを伝えることの両方です。
このガイドでは、公開する説明と社内に残す根拠を分け、調査・外部統計・自社実績に合わせて必要な情報を整理します。記者や読者が、同じ根拠を確認できる原稿を目指します。
数字には対象・期間・単位・方法を添える。本文の主張と、元資料の該当箇所を一つずつ対応させる。
- 調査概要を抜けなく書ける
- 割合・増減・実績を正しく表現できる
- 社内の根拠確認表と外部向けの出典を作れる
数字を書いたら、主張と根拠を一対一にする
原稿から数字、比較、調査結果、外部の発言を拾います。『利用者が増えている』にも、いつからいつまで、何を数えたのかという根拠が必要です。末尾に資料のURLを並べるだけでは、どの資料が何を支えるか分かりません。
社内では資料名、該当箇所、集計条件、確認者を残します。公開原稿には読者が数字を解釈するための条件を記載します。個人情報を含む原票や営業データを、説明のためにそのまま公開する必要はありません。
原稿の主張から元資料へ戻る確認表
| 原稿の主張 | 元資料と条件 | 確認者 |
|---|---|---|
| 有効契約500店舗 | 9月末の契約台帳。解約を除く。企業数ではなく店舗数 | 営業責任者 |
| 回答者の70%が週1回以上確認 | 設問3、単一回答。有効回答100人、70人が該当 | 調査担当 |
| 処理時間を20%短縮 | 同じ作業・条件の検証結果。対象5人、比較手順を保存 | 検証担当 |
架空の確認表です。数値の根拠資料と、外部へ公開してよい範囲は別に確認します。
自社アンケートは、誰に何をどう聞いたかを書く
AAPORの調査開示基準では、調査主体、対象、募集・抽出方法、質問、調査期間、回答数などの情報を重視しています。ここではその透明性の考え方を、広報の調査概要へ応用します。日本の法律上の必須項目の一覧として扱うものではありません。
調査を委託した場合も『Web調査』だけで終わらせず、誰をどの条件で集めたかを確認します。自社のメールに回答した利用者は、すべての飲食店や生活者を代表するとは限りません。対象は本文でも『回答した自社利用者の』と書きます。
質問文と選択肢は結果の意味を決めます。単一回答と複数回答、未回答を含むか、重み付けの有無を確認し、詳細を本文に収めにくければ、同時公開する調査方法のページへ案内します。
割合と増減は、分母と計算式まで確認する
70人が回答したのか、100人中70人が回答したのかで、伝わる情報は違います。割合は『該当者数 ÷ 対象者数 × 100』で確認し、回答項目ごとに分母が変わる場合は、その項目の回答数を添えます。複数回答では合計が100%を超えることがあり、丸めで100%にならない場合も注記します。
割合が20%から30%になったとき、差は10パーセントポイント、元の割合に対する増加は50%です。『10%増』とだけ書くと両者を区別できません。ONSの表記指針も、割合の差と相対的な増減を分けています。
20%から30%へ。差は10ポイント、相対増加は50%
計算を説明する架空の値。30 − 20 = 10ポイント。(30 − 20)÷ 20 × 100 = 50%増。実際の企業や調査の結果ではありません。
外部資料は、数字の元に直接案内する
元の調査や統計を開き、対象、期間、単位、表の見出しを確認します。要約記事の数字を使う場合も、発表元の資料へ戻れるなら戻ります。『企業』と『事業所』、名目と実質、年度と暦年などの取り違えに注意します。
出典には発表機関、資料名、公表日、該当ページや表番号を添えます。リンクは機関のトップページより該当資料へ。PDFではページ番号が印刷上の番号か、PDFのページ順かも区別すると探しやすくなります。
グラフを自分で作り直したときは『○○の数値から当社作図』と明示し、変えた単位や集計方法があれば説明します。出典表記だけで画像・文章の利用条件を満たすと決めず、転載や引用に必要な条件も資料ごとに確認します。
自社実績は、累計・現在・単位を区別する
『導入500』だけでは、企業数、店舗数、アカウント数のどれか分かりません。累計で500店舗が導入した結果と、いま500店舗が有効契約している状態も違います。時点と集計対象を含めて表現します。
No.1や最大などの比較表現には、その比較を支える根拠が必要です。消費者庁の説明を踏まえ、調査の存在だけでなく、その調査が本文の主張を裏付けているか確認します。判断が難しい表現は、営業資料の言葉をそのまま転記せず、確認できる実数へ戻します。
実績の意味を変えずに伝える
導入実績
- 見直す前
- 導入500社を突破
- 見直した後
- 有効契約500店舗(2026年9月30日時点、解約を除く)
企業数と店舗数、累計と現在の契約を区別します。
調査結果
- 見直す前
- 飲食店の70%が週1回以上確認
- 見直した後
- 回答した自社サービス利用者100人のうち70人が、週1回以上、他店舗の予約状況を確認
結果を回答者の範囲に限定し、分母を明示します。
単位と時点を補った架空例。元資料が累計なら、現在の契約数へ言い換えないでください。
公開前には、もう一人が元資料を開く
確認者は、数字が合っているかと、文章が言える範囲を広げていないかの両方を見ます。『満足した』を『購入したい』へ言い換えていないか、限定された対象を『業界全体』へ広げていないかを確認します。
公開後に誤りが見つかったら、元資料を確かめ、正しい数字と訂正日を残します。配信済みの資料や掲載先にも旧情報があるか確認します。確認者と修正担当を先に決めておけば、根拠を探すところからやり直す時間を減らせます。
確認に使った一次資料
AAPOR|Disclosure Standards調査の透明性に関する専門団体の基準。日本の法律上の義務の一覧ではない。確認日:2026.10.01原文(別タブで開く)英国国家統計局(ONS)|Percentages and percentage points割合の増減とパーセントポイントの違いを説明する表記指針。確認日:2026.10.01原文(別タブで開く)消費者庁|No.1表示に関する実態調査報告書の公表2024年9月26日公表、1ページ。合理的な根拠に基づかず事実と異なるNo.1表示についての説明。確認日:2026.10.01原文(別タブで開く)読む。整理する。書き始める。
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